オリジナル格納庫

ある意味、カオスの巣窟。

あの桜並木の下で 小品集 中期

カエルの歌が2。

カエルの歌が2。 本文

続き。
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おわよーございまー……ぶわゎゎ……。
はい、おはよさま。夕べは寝られんかったね?
おはよう。……さすがの貴ちゃんも、カエルには勝てなかったようね。
そらね。多勢に無勢じゃぁね。
そないにうるさかったかね?
うん。自分ちの周りには、あんなにたくさん居ないもの。……ね?
そうね。居て数十匹ってところかしら。
うとうとしたら、どばーって鳴き出すんだもん。参った。
……あ。やった! ジャガイモとタマネギだ!!
アンタが好きやし、秋子は体冷やしたらイカンで。
冷めんうちに、早よあがりんさい。
私は付け足しよねー。……いただきます。
いっただっきまーす。
なまんだぶなまんだぶ……いただきます。
具がジャガイモとタマネギの時は、麦味噌が絶品よね。
最初はビックリしてた人のセリフとは思えないわね。
だーってー……味噌なのにじわーっと甘いんだもん。
それと匂い。
自分が知ってる味噌の匂いじゃなかったんだから、仕方ないでしょ。
東は味噌が違うとね?
ええ。もっと塩辛いし、色も濃いわよ。
あとね、お椀の底に、こんなに糟が溜まらない。
あ。それは、味噌漉しを使ってないからよ。
……そーなの?
ウチゃこうなってないと、みそ汁って気がせんでねぇ。
……と、お祖母ちゃんが申しております。
へー。
見た目は悪いし、口にも麦の筋が触っちゃうんだけどね。
でも、私も麦味噌はこうじゃないと、美味しくないのよ。
母も味噌漉しを使わなかったからだと思うけど。
おかーさん、料理したんだ、あの家で。
たまにね。…でも、姉たちには不評だった。
ま。ま。そういう嫌な話は、今は止めよう。
食事は美味しく。
岩下家家訓……ね。
おもろい家やねぇ。貴子ちゃんトコは。
父親が愉快な人だったんで。
……あ。ねぇ、チヨコさん。
はいはい。なぁに?
いっつもさー、「いただきます」を言う前に、「なまんだぶなまんだぶ」って言うけど、
なんで?
大したことやあれへんよ。
そう?
でも意味があるから言ってるんでしょ?
……ふふふ……。
なによー。
その質問、私も小学生の時にしたなって。
どーせ、小学生レベルですよー。
ね、良かったら教えてよ、チヨコさん。
ほんに大したことやあれへんねで?
ふんふん。
『私の命をつなぐために、私の前にあるあなた方の命を頂戴します』……ちゃ毎回言うたら大変やんか。ほで『なまんだぶ』て言いよっとよ。
……わおー。
な? 大したことあれへんやろ?
んにゃ。そんなことないよ。
すげー感動した。
そっかー。そうだもんね。今ゴハンにかけてるタマゴ(コレ)だって、本来ヒヨコになるためのものだもんね。
それを人間が勝手に食べてるワケだ。そら『なまんだぶ』だわ。
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