オリジナル格納庫

ある意味、カオスの巣窟。

あの桜並木の下で 小品集 中期

双子とその父とその叔母

双子とその父とその叔母 本文

岩下家の長男次男(双子)が生まれてひと月ばかり経った頃。
友則と貴子が、座布団に寝かせた双子を囲んで、微妙な面持ちで覗き込んでいます。
季節は秋。台風一過で岩下家本宅の庭は荒れ放題ですが、なんだか気持ちの良い風が吹いている、
秋晴れな日の午後なのです。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
うーむ……。
うーん……。
………。
うーん……。
うむむむ……。
………。
どうして……。
アタシに訊かないでくれる?
身に覚えはないわよ。
あってたまるかっっ!
相変わらず冗談が通じないおっさんだね。
お前のは、時に冗談に聞こえん。
…………。
さっきの言葉の、どこに真実が入る余地があるとでも?
……それは、ないな。
だっしょう?
しかしだな。
言わんとしてることはわかってます。
しかし、だな。
皆まで言うな。
私の方が理由を聞きたいくらいなんだから。
身に覚えがないなら、な。
あってたまるか。
貴(タカ)は、いい。
……間違いなく、アンタの子供だよね、この顔は。
うむ。……しかし、だな……。
だからっ。
皆まで言うなって。バカ兄貴。
子供たちの前でそういう言葉を使うのはやめなさい。
まだ分かんないわよ。
岳(ガク)という前科があるからな。
アレは別格。
なんでかは、アタシも嫁もなんでああいうことになってるのか解りません。
……6年も飼ってるのに、わからんとな。
解りません。
……作者が知ってるんじゃない?
誰だ。それは?
……いや、こっちの話。
お二人さん。
そんなに見つめてたら、子供たちに穴が開いちゃうわよー。
……だって……。
……なぁ。
何がそんなに深刻な顔で覗き込んでるのかしら?
お父さんと叔母さんは。
こーんなにふたりにそっくりなのに~。
その事実が問題なんじゃないですかっっ! (×2)
そんなに大きな声でハモらなくても♪
兄貴にはともかくっっ……
貴子(こいつ)に似てる理由が分からんっっ!!
あら、だって。
お父さんと叔母さんでしょうに。
(口をぱくぱくさせたのち)
お……お兄ちゃん。
……な、んだ?
私、お兄ちゃんの従妹とかはとことかじゃないよねぇ?
……た、たぶんな。
長いこと一緒に暮らしていたら、姿形が似かよってきてもおかしくはないんじゃない?
に……
似て……?
(ゼンゼン似てねーしっ。 ×2)
それよりも何よりも……だ。
アタシは自分によく似ているコレを「トモ」と呼ぶことに、ひっじょーに抵抗感を思えます。
それはオレのセリフだ!
……じゃぁ、「アキ」にする?
どっちがどっちか分からなくなるわよ?
なんで、こんな時に柳原家の慣習を取り入れることに賛成するかな、このおっさんは!
お、オレのせいかっっ!?
アンタが強固に反対しなかったのが悪いっ!
お前も「まー、いんじゃない?」って言ってたろうがっっ!!
ストップ、おふたりさ……
(ふぇぇぇぇぇ………)
あ……。
ぁ……。
ほーら、やっちゃった。
……子供たちの前でうるさくするなら、庭の片付けをしてちょうだい。
さっきから、現実逃避してるでしょう? ふたりとも。
……ぃ……。
……ぅえ…。
…………。
お返事は?
はーい。
……片付けてきます。
その前に、ちゃんと泣きやませてから行って下さいね。
……お茶淹れてくるわ。
…………。
…………。
すげーヨメもらったねぇ。
そーだな。
…てか、このサラウンドをどうにかしますかね。
……で、どっちあやす?
……じゃ、トモのほうで。
どっちにしても微妙だなー。
自分と同じ顔をあやすか、自分の名前を呼んであやすか……てーのは。
……いいから、文句言わずにタカのほうを。ホレホレ。
はいはーい。
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