オリジナル格納庫

ある意味、カオスの巣窟。

あの桜並木の下で 小品集 時間外

それが嫌いなワケ。

それが嫌いなワケ。 本文

嫌いには、それなりに理由がある。
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……。
……ちゃん。
……ん。
貴ちゃーん。……貴子おばちゃん。
……ああ。ハル。
どした?
眠いの?
寝てた?
うん。
そか。
いつもずっと寝てるね。
そ?
あたしが学校から帰ってきたら、いつも寝てるよ?
んー……そか。
お絵かき、しないの?
してるよ。
みんなの知らない時間に。
いつできるの?
さぁ?
いつのことやら。
ふぁ……。
眠い?
うん……薬飲んだからね。
眠くなるから嫌いなんだけど、飲まないと。
お母さんが怒るから?
(苦笑して)いんやー。
あんたたちと、もっと一緒に居たいからね。
ずいぶん昔に約束もしたし。
誰と?
岳(ガク)と。
て、……憶えて…ない、か。
ううん。おぼえてるよ、岳おじさんのこと。
おじさん……ねぇ(苦笑)
たしかに、あんたからみたら充分おじさんだったね。
貴ちゃん。
はい、なんでしょう?
これー(ランドセルから何やら数枚の紙を出す)
(それを受け取って)なにこれ? 国語の時間に書いたの?
うん。そう。
へーぇ。
(読む)……将来の夢……ね。そーいや私も書いたなぁ、こういうの。
貴ちゃんはなんて書いたの?
ん? 面白くもなんともないよ。
『お父さんとお兄さんのお手伝いをして、お店をやります。』……だったかな。
そんな感じ。
……ハル。ランドセル下ろして、ここにおいで。
いいの?
どーそ、どーそ。
いらっしゃいませー(掛布をめくる)
えへへへ(ベッドに潜り込み、貴子の左脇ににじり寄る)
貴ちゃん、大好き。
そう。ありがと。
(左腕で春花を抱く)
私ね、本当はね、貴ちゃんのお嫁さんになりたいの。
おやまぁ。
しかし、それはどうかな?
ダメ?
うん、ちょっと難しいなぁ。
じゃ、ずっと貴ちゃんと一緒にいる。
それもダメ?
それなら、なんとか。
……じゃ、私はもっと頑張ろうかね。
(うとうとし始める)……貴ちゃーん……。
はい。
あのねー……貴ちゃん好き。
ありがと。
貴ちゃんの匂い好きー。
お日様と絵の具の匂いがするもん……。
そう?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あらまぁ。
……し……。
……。
いつまでも帰ってこないと思ったら。
こっちに直帰だったのね(苦笑)
……そのようで。
妬けるわね。
あんたに妬かれてもねぇ(苦笑)
この子、私と寝たことなんてないのよ。
物心ついてから。
それはそれは。
重くない?
……実を申せば、ちょっと痺れてます。
それと、暑い。
お互い子供体温だものね。
いやいやー。
母屋に運びましょうか? 友ちゃん呼んでくるわよ?
んにゃ、もう少しこのままでいいよ。
……今日はえらくゴキゲンね。
そうでもないよ。
ハルに昼寝を邪魔されたカッコになったし。
薬が効きすぎてる?
もともと効きやすい体質だもの、しゃーないよ。
(道具類が置いてある作業台の上を見て)絵、止まってるわね。
仕方ないね。
何描いているの?
ナイショ。
そのうちに見せる。
そう。
(頷く)
夕飯の用意するわね?
それなら、私も……
そのまま寝てなさい。
お昼寝してないんでしょう?
できたらふたりとも起こしてあげる。
(右肩だけをすくめる)
すみませんね、せっかくのお休みなのに。
目、眠そうよ。
……うん。実はその通り。
お休み。貴ちゃん。
んー……(目を閉じる)
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