あの桜並木の下で 小品集 後期

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好きに理由はない。

……。
くぉら、ガンタ。
んー?
アンタが今考えてるコト、当ててあげましょうか?
いい。カホリさん、意地悪だから。
アタシは意地悪かもしれないけど、アンタは不実よねぇ。
……。
……。
……。
否定しないんだ?
……できないもん。
よねー?
外国に住んでる愛人のトコまで来て、別の人間のこと考えてるんだもんね。
……。
何か一言?
……意地悪。
アンタ苛めるの、おもしろいわーぁ。
……帰る。
どうやって? 車、ないわよ?
なんでさ?
太朗が今朝、乗っていったから。学校にね。
……あいつめ……。
じゃ、タローの単車でいい。
乗れないモノに乗ろうとするんじゃない!
アンタがあっちでよく乗ってたカブとは排気量だけでも10倍以上違うのよ。
……。
ま、せいぜい大人しくしときなさい。
……頭たたくな。
あら? 撫でてあげただけよぉ?
……芝刈ってくる。
アンタもねぇ、ばっかよね。
……何が?
自分の感情に振り回されたあげくに、現だったり元だったりする愛人のトコに
転がり込んでくるんだもん。それも外国のね。
……。
……また秋ちゃん?
……違うよ。
あら、めずらしい。
あれは兄嫁。つまりはアタシの義姉(あね)なの。
でも好きなんでしょ?
……。
気になるから家に引き込んだんだものね。
……それ、いつの話よ。
さて、いつだったかしらね。
……やっぱ帰る。歩くし。
街まで何マイルあると思ってんの。
なんでこんな辺鄙なトコに住んでんのさ。
街中は家賃が高くってねぇ。
アトリエ用ガレージの維持費もバカにならないのよ。
でっけぇモノ作るからね、カホリさん。
アンタほどじゃないけどね。
何アレ? こないだのビルみたいなヤツ。
……アレは、どっかの企業から頼まれたヤツ。
創立100周年とかのモニュメントだって。
仕様書に冗談で数字書いたら、実際にできあがっちゃった……て言うのがホントのところ。
とにかく、そこの会長さんが、でっかいモノが欲しかったらしいよ。
適当に設計したようなコト言ってるけど、その割には面白いモノ作ったわよねぇ。
そかな?
アンタ、ちゃんと計算して作ったでしょ。
じゃないと、あんなふうに巧妙に変化したりしないわねぇ。
さてね。偶然かもよ? 
そうでなくても、誰も気がつかなかったら、
単なる変なでっかいオブジェってだけだよ。
最低でも、アタシは気がついたわねぇ。だからアンタとしてはしてやったりなんじゃないのかな……って
思ったんだけど?
……。
……アンバランスさがアンタらしさなのかもね……。
……。
アタシから見たら、自分の感情に振り回されていつもへこったれてる
おバカな小僧なんだけどね。
……芝、刈ってくる。
日差しに負けて倒れないでねー。
……冷たいフルーツポンチ。
はいはい……て、あれはねぇ………
………。
て、行っちゃったか。………。
……ホント、ばっかよねぇ……。
好きなら好きで、相手にぶつけてみれば?……って感じだわ。性別とか年齢とか、関係ないでしょうに。
……。
……吹っ切れて、突き抜けるまで……ま、無理でしょうけどね。アタシみたいに。
(何やら思い出して、くすくす笑いつつ、冷蔵庫の中からおやつの材料を取りだし始める)

自分の感情をもてあましすぎて、行動が世界規模になるのが、貴子クオリティ。
有り体に言えば、ただのおバカ(w。

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