あの桜並木の下で 小品集 中期

カエルの歌が。

 愛媛のばーちゃんち。
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何の音?
カエルよ。
カエル……。
2号店の周りでも鳴いているじゃない、この時期は。
……そーだけどさ。
ホントにカエルなの?
ええそうよ。なんならお祖母ちゃんに訊いてくれば? 私じゃ信用ないみたいだから。
……そんなことないよ。……でもさー。
数が違うものね。
へ?
関東のウチの周りとここじゃぁ、カエルの数が違うから。
そんなに?
ええ。何万匹かいると思うわよ。この集落とその周辺全体で。
……マジですか。
ええ。この家の周りだけでも1000はいるんじゃないかしら。それ以上かもね。
それでこの音なのか。
初めて?
そりゃね。ウチ、田舎ってのがないからさ。
親戚づきあいとか。
ないよ。母さん一人っ子だったらしいし、
父さんは西の最果てから出てきてフラフラしてたら母さんにとっ捕まったって話だから。
ちなみに、父さんの名前が岩下ね。
お母さま方のご親戚は?
いないみたい。よくわかんない。
じーさまも相当の変わり者だったらしくてさー。
昭和の初めくらいに、あのあたりで適当に当時流行ってたモノで商売始めて、
廃り始めたら次の流行モノに手を出してー……って感じで、うまーく波に乗りながら
やってた人らしい。…で、最後に手を出したのが、プラモ。
……そんな感じで、とにかく親戚づきあいがないのよ、どことも。
そう。
おかげで、そっち方面の煩わしいことは、一切ないけどね。
そうでしょうね。
田舎がないから、どこかに里帰りとかって感覚もわかんない。
大学(がっこう)も地元だったものね。
そゆこと。
……しかしすげーなー。これ全部カエルの声ね。
ずーっと鳴いてるの? 秋まで。
そんなことはないわよ。
今はね、特に大きいわね。声が。
なんで?
水が入ったから、田んぼに。
はい?
田んぼに水が入ると、カエルが鳴き始めるの。初夏の風物詩ね。
ふぅん……。
そしてね……恋の季節なのよ。
あらま。……そゆことか。
ええ。
そらカエルたちも頑張らなきゃーだね。
そうね。
……ずーっと鳴いてるってこと、ないよねぇ。
鳴いてるわよ。
え”。
慣れたら気にならなくなるわ。
……。
耳栓、買ってくる?
一番近くのコンビニまで20kmくらいあるけど。
……。
…ふふ……。

カエルが鳴き始めたら、「あ、田んぼに水が入ったな」と感じる初夏でございます(w。

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