ERAMINAN

強いて言うならば、それは、ライフワーク。

サウス=ニザム・駄文 :: ―ERAMINAN―

うそかまことか

うそかまことか 本文

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ERAMINAN 『サウス=ニザムの紅い疾風(とり)』
…の頃は微妙に脇役だったこの人たち。

サリー=L・バーズ少尉とクリス・O=ジンジャー兵長。小隊が違うのによくつるんでる。
理由は簡単。この二人、愛人同士だから。←

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1

○サリーの部屋。尉官用宿舎とある階。
クリスが来て、なにやら仕事の手伝いをしている模様。
サリー
……うん……。

 

クリス
どうしました?

 

サリー
……んー……いや。

 

 
クリス
煮え切りませんね。

 

サリー
……まぁーねぇ……。

 

クリス
……今度は誰なんですか?

 

サリー
……。

 

クリス
……。

 

サリー
そういう態度は、よくない。

 

クリス
(にっこしと微笑み)図星ですよね。

 

サリー
……あー……まぁね。

 

クリス
別に構いませんよ。

 

サリー
……君の心が海のように広くて助かる。

 

クリス
見たことあるんです? 海。

 

サリー
いや、ない。本物は。

 

クリス
地図でなら誰でも見たことあるでしょう。

 

サリー
クリスは?

 

クリス
ありますよ。

 

サリー
お! それはすごい。

 

クリス
写真でね。

 

サリー
なーんだー。

 

クリス
曾祖父が若い頃に自分で撮ったものだとか。

 

サリー
へぇ…。それはまた、年代物だねぇ。……こっちの人間じゃないんだ?

 

クリス
厳密には。

 

サリー
ま、この国にゃ、移民の方が多いわけだが。

 

クリス
ですねぇ。名前でかろうじて出生が知れる程度ですからね。

 

サリー
君と私は、さしずめ同地域の出だと思うけど?

 

クリス
違いますねぇ。

 

サリー
……あら。

 

クリス
BirdsとGingerで同じように見えますけど、違いますよ。

 

サリー
そうなんだ?

 

クリス
ええ。私の家系はダブルネームなので。

 

サリー
ん?

 

クリス
O=ジンジャーが正式なファミリーネームなんです。
OはオライオンのO。

 

サリー
オライオン?

 

クリス
綴りとしてはOrionです(テーブルの上に指で書く)

 

サリー
(それをのぞき込んで)オ…リ…オン……。

 

クリス
ええ、普通ならそう読みますね。

 

サリー
なるほど。

 

クリス
……で?

 

サリー
はい?

 

クリス
話をうまく逸らしたつもり……ですよね(にっこし)

 

サリー
(目線がぐるっと回って、クリスから目をそらす)

 

クリス
喋りたくないなら別に構いませんよ。

 

サリー
……いや……ねぇ。

 

クリス
声に出したから、聞いて欲しいのかなと、思っただけです。

 

サリー
……まぁね。

 

クリス
でも、ちょっと失礼だなって、思いました?

 

サリー
……うん。有り体に言えば、そう。

 

クリス
……。
……この書類。これでいいですか?(差し出して見せる)

 

サリー
(のぞき込んで読む)……OK。完璧。

 

クリス
じゃ、お茶を入れますね(席を立つ)

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

2

サリー
(お茶を飲みながらくつろぎつつ、書類に目を通している)

 

クリス
(サリーと同様に)

 

サリー
(書類に目を向けたまま)……思うに。

 

クリス
(顔を上げてサリーを見る)

 

サリー
(書類から目を離さずに)嫌われてしまった方が、気分的に楽だなって、思うわけだ。

 

クリス
……(サリーが合いの手を入れて欲しいわけではないと気が付いたので、黙って聞いている)

 

サリー
このままでは相手からは“いい人”で、こっちはずっと悶々とする羽目になる。

 

クリス
……。

 

サリー
それって、一種の生殺しだよな(書類になにやら書き込む)

 

クリス
……そう……かもしれませんね。

 

サリー
でも相手からすると、嫌う理由がないんだよねぇ。困ったことに。

 

クリス
……。

 

サリー
……で、あるならば。方法は二つ。

 

クリス
(お茶を飲む)

 

サリー
じわじわとこちらから離れていくか、「なかったこと」にするか……だ。
……。
(書類越しにクリスをまっすぐ見て)……どっちが良いと思う?

 

クリス
……少尉は、どうしたいんですか?

 

サリー
わからん。

 

クリス
まだ好きなんでしょ?

 

サリー
たぶんね。

 

クリス
……たぶん?
……ご自身のことじゃないんですか?

 

サリー
……そんなこと、いつ言ったかな?

 

クリス
すみません。てっきり……。

 

サリー
……まぁ、あながち間違ってない。

 

クリス
……。

 

サリー
……いろいろとね、シミュレートをね。

 

クリス
……いちど創造主《ゼノウス》に踏まれてらっしゃい(にっこり)

 

 
サリー
……あ。それひどい。
ちょっといろいろ想定してるだけじゃない。

 

    
クリス
そろそろ新兵配属の時期ですからね。浮かれるのも理解できますが……って
ことにしておいてあげます。

 

サリー
そぉ? ……ありがと。

 

クリス
私はともかく、そろそろ誰かから刺されますよ。
そうですね……さしずめ……カラシニコフ大尉あたりですかね。
あるいはパウンゼン上等兵か。

 

サリー
ミハイロは、相手が女の子な限りは大丈夫。Apは……アレはアレで……

 

クリス
……ワケあり……ですからね。

 

サリー
そうそう(にっこり笑う)……そろそろ……って感じかもね。

 

クリス
……そう……ですか。

 

サリー
せいぜい、ヘマしないようにやるよ(クリスの手を取って、甲にキスを一つ落とす)

 

クリス
(手を返して、サリーの手を取る)そうですね。
せいぜい、気をつけて下さい(がっしりと全力で握りしめる)

 

サリー
(痛さのあまり、声にならない声を上げた)

 

クリス
……ご武運を(立って、二人分のカップを手にキッチンに消える)

 

サリー
(手をさすりながら)……あ、ワタシの分、ウイスキー1ショット入れてねぇ。

 

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