へっぽこ・ぽこぽこ書架

二次創作・駄っ作置き場。 ―妄想と暴走のおもむくままに―

『魔法少女まどかマギカ』二次創作SS

生(イキル)―杏子―

生(イキル)―杏子― 本文

 解ってることは三つある。
 ひとつは、あの時のあたしは途方もなくガキで考えが浅かったということ。
 ひとつは、あたしはもう、魔女から殺されないかぎり死なないみたいだってこと。
 ひとつは、そんなあたしはこれから先、泥水すすってでも生き続けてやるんだってこと。
 ふつうの人間たちに、“ヤツら”は見えない。
 だから、“ヤツら”を狩って退治したところで、誰からも褒めてもらえるわけじゃない。
 じゃ、なぜ“ヤツら”をわざわざ見つけて狩っているのかと訊かれたら、あたしはこう答えるんだ。
『だって、“ヤツら”を見つけて狩らないことには、あたし、生きていけないからね』
 “ヤツら”を狩るには“チカラ”を使う。“チカラ”を使えば「ソウルジェム」が濁る。濁れば“チカラ”が弱くなる。ヤツらを狩れば“それ”が手に入る。“それ”を使えば「ソウルジェム」の濁りが浄化される。
 あたしはある時気がついた。
 ソウルジェムが濁りきらないかぎり、つまりは“チカラ”が弱くならないかぎり、いくら飢えてもあたしは死ぬことはないらしい、と。
 ……だから、“ヤツら”を見つけ出して狩り、“それ”を手に入れないといけないんだ。
 もちろん、飢えるのはいやだよ。
 だから、可能な限り、あたしは食べる。食べ続ける。
 家族なんてとうになくした、天涯孤独の根無し草なあたしが、どうやって食べるものを手に入れてるかって? それは内緒。いろいろ手はあるって話。
 それを正面きって訊いてきたのは、アイツだけだったけどさ。調子狂うよな。まったく。

 アイツに会って、なぜだか自分の話をした。
 今までそんなこと、誰にもしたことなかったのに。
 理由? わかんない。
 ただ、なんとなく。
 そうだな……アイツ、苦しそうにしてたから……かな。あたしと同じ間違いを犯して。
 願い事は、自分のためだけしか使っちゃいけない。
 自分以外のことに使ったって、ろくな結果になりゃしないんだ。
 結局、誰もシアワセになんか、なれない。
 自分のために願いを使えば、それは自分にだけ返ってくる。
 その結果がどんなことになったって、納得できるんだよ。
 だから、願いは自分のためだけにしか、使っちゃいけないんだ。
 食べる。ひたすら食べる。
 生きるために。生きていると感じれるように。
 あたしにはそれしか、もう何も残されていないから。
 “ヤツら”を狩ることは義務なだけ。自分のソウルジェムを濁らせないためだけに。
 生きてるかぎり“チカラ”はほんの少しずつ消費されていってて、“ヤツら”を狩らなくても、じりじりと濁っていく。
 気がついたのは、独りになってからだった。
 食べるものがなくて飢えてた。でも平気で。
 そのころはもう、理由がなくなったからと、狩りをやめていたころで。
 狩りをしなければ“チカラ”は使われていないはずなのに、ある日見ると濁ってたんだ、あたしのソウルジェム。
 それで気がついた。
 あたしは、生きるために、生き残るために“チカラ”を少しずつ使ってしまっているんだと。
 それからはもうイタチごっこ。でもかまわない。
 あたしは生きる。どこまでも生き抜いてやるんだ。
 それこそ、泥水すすってでも、生きてやるんだ。
 “ヤツら”なんかに、喰われてなんかやるもんか。
 だから
 今日も“狩り”に出る。
 ヤツらと、そして食い物を。
 アイツがまた軽蔑するかもしれないけど、それでもいい。
 今はただ、
 ひたすらに
 生きるために――。
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